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『日本にある伝説よ伝説。
牛若丸と弁慶が決闘して、弁慶がそこを殴られたってゆーね?』
『そことは?』
おいでおいで、と
姜を呼び寄せ
『いいの?』
『……何が?』
若くて多少イケてる顔を歪ませてやる。
“ごん”
『いってぇ!!』
右脛を蹴っ飛ばした途端に跳ね上がった姜自体に
笑いを浴びせながら
『ここ!弁泣き!
弁慶もここ蹴っ飛ばされてアンタみたいになった訳よ!
要は弱点!
ぎゃはははははははははっ』
あー、愉快!
『何すんだ!』
「ひゃあ!」
グイ、と引っ張られた拍子に
バランスを崩すと、どーしたってこーゆー結果になる、わな?
『……いって』
『ごめん、ごめん』
身体を起こした姜に馬乗り状態の私。
誰かをこうやって跨いだのなんて、ちょい久しぶり。
思い出したのは
“陣内”
……陣内の噂は、ちゃんと耳に届いているから
元気にしてるのは、知ってる。
『重い』
『あ、ごみーん』
立ち上がって、姜に手を伸ばす。
姜の手は勿論、私よりも大きかった。
私が陣内の事を知ってる、とは言ったが
それはあくまで、医療界でのニュースを聞くだけで
実際にどうしてるかを知ってる訳ではなく
さらに
陣内は、私がこんなところにいるなんて
考えた事もないだろう、と思われる。
姜を引き上げた力に引き摺られるように前のめりになった。
『さ、飯食って、準備しよっか、姜先生』
姜とは同じ屋根の下でこうして寝食を共にしているけど
間違いが起きた事はただの一度も、ない。
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