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指1本触れない陣内。
ウーロンティを飲んでも
飲んでも、渇きを感じる。
“吐いても容赦しませんよ”なんて言われて
結局その後何も食せずに時間は過ぎるばかり。
「有馬さん、もう食べないんですか」
は?
お前が食うなっつったんじゃん!
至ってクソみそ真面目に私を見つめるその顔に
無性に腹がたった。
陣内は眩し妖し微笑みを見せると
「じゃあ、いきましょうか。
有馬さん」
私を促す。
どこへ。
どこへ、行くんだ。
……あの
あの、私は帰れないんですか。
パスポートとか用意してるって仰いましたが
どういうことですかね。
おうちにある筈のパスポートはいったい……。
バーラウンジを出て
きっと陣内の部屋へ近付いているんだろうと思われる一歩一歩に変な緊張が走りまくった。
物音一つしない、落ち着いた雰囲気の廊下を
陣内の背中ばかり、それこそ穴が開くほど見て進む。
首締められたりしないだろうか。
……どんな心配をしてるんだ。
きっと今までにないくらい怒ってる筈の陣内が
部屋に入ってまさか、何もしない訳はない。
どんなことになるのか
想像もつかない。
「どうぞ」
私が先に入るのかい。
「お邪魔、します」
きっとギクシャクしてるのが
陣内に丸分かりなんだろうな、と思いながらも
開けられたそこへ進む。
わ!
凄い部屋。
そう思ったすぐに、後ろでパタンとドアが閉まった。
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