カルテ11

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「お前はどうすんの」 「は?」 心外の医局前まで辿り着いて 今まで笑ってた先輩の顔からそれが消える。 「有馬ぐらいなんでもできたらどうにでもなるんだろうけどな、お前欲ないの?」 「欲?」 「なんかで有名になろうとか、どっかの分野で飛び抜けようとか……」 「考えたことありません」 「真剣にどっかに注ぎ込むのもいいだろ」 「いや、いいです」 「救命で一生過ごすのか」 「そうです」 飛び抜ける役割が当てはまる人はたくさんいる。 その人たちに任せればいい。 だいたい、この後の進路は決まってる。 だから、心配しなくていーし。 「……なんだ、有馬、どうした」 「え?」 とても困り果てた先輩の顔が すごく印象的だった。 「オレ、苛めたみたいだろ……」 「は?」 「陣内先生に見られたらエラいことになるだろーが」 伸びてきた掌が頭の天辺をポンポンと弾む。 「泣きやめ」 ドキリ、とした心臓。 緩く滑り落ちていく頬に感じる雫。 先輩はそれ以上何も言わなかった。 私は、もうじきこの病院を辞めるんだ。 それは、自分で決めたこと。 だから なんで、泣いたのかさっぱり分かんない、分からなかった。
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