ファイナルカルテ

4/30
前へ
/35ページ
次へ
よく呆れられたもんだ。 ほんとにちゃんとした教育をされてきたのかって。 ああ、常識に対してかな? あはは、それは分からないけど。 だから、私の医者としての裁きを見るまでは ほんとに冷たかった姜先生。 韓国は見えない金が集まるところ、なんだそうだ。 よくは知らない。 あのクソ代表ザルとタダではない“心臓”と交換した条件。 確かに。 こんな大都市に構えた小綺麗な病院。 白石醫院よりも格段に医療機器のレベルは高いし しかも前と違うのは、昼過ぎまではちゃんとした街医者並の診療をしているところだ。 だから、地元民も私の事を“ソンセンニ”と呼んでくれる。 近くの食堂では、何かしらの差し入れを貰ったりと なんだか、和気藹々としたムードに いつの間にかどっぷりと浸かっていることに気付いた。 『医療以外はほんと、ダメだな!』 姜先生の口癖は どことなく、懐かしい響き。 もう1年も経つのに、なかなか抜けていってはくれないそれに いつも潰れそうになる。 女は、一旦自分で“おんな”だと認めてしまったら なかなか、そこから立ち直る事が出来ない。 こういうのも ダメ女、と呼ばれる所以(ユエン)なんだろうな。 『日本人女性はもっと細やかだと聞いてたのに』 「ごみーん」 合掌して ご馳走様、ついでにベロを出しておく。 『ゴ、ミィン?なんだそれ、なんて意味?』 『 ごめん、の丁寧版よ』 擽ったい笑いが込み上げる。 『さ、働くか! 今日も1日よろしくお願いします』 韓国の1日が始まる。 なかなか、これでも忙しい日々を過ごしてるんだ。 まぁ、日本にいた頃よりも 確実に身体を休める時間はあるけど。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

813人が本棚に入れています
本棚に追加