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わたしの横を素通りして部屋の中へと進む陣内。
あれ。
「有馬さん、風呂、入ります?
先、どうぞ」
デカイベッドがばーん、と、ひとつ。
広めのソファーセット。
テーブルの上にはパソコンと、紙が何枚も置かれている。
先、どうぞ、と言われたバスルームは
部屋から丸見えのガラス張りだった。
いや、そもそも、着替えがない。
「何も持ってきてない」
「何も着なくていいですよ」
「は?」
「有馬さん。
飛びかかりそうなんで早く風呂入ってもらってもいいですか」
私に背を向けたまま、テーブルの上を片付け
そのようなおっそろしい事をサラリと言う陣内。
顔が見えないだけに
本当に恐ろしい。
じゃあ、なにか。
風呂に入ってしまえば、私は飛びかかられるという事か。
これは案外ヤバいかもしれない。
何故って……
私の中の刷り込みがバリバリに目覚めているからだ。
ガラス張りのバスルーム。
プライバシーなんてあったもんじゃない。
ドクドクする心臓は立派に身体と頭に反応して
その拍動をどんどんスピードアップさせる。
「じゃ、お先にいただきます」
って、陣内。
お先にいただく筈だったのに。
これはどういうことだ。
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