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こんなに幸せな時間というものを
膚で感じるような
五感全てが満たされる事があっただろうか。
あったのかもしれないけど
それすら感じる余裕がなかっただけかもしれない。
「おい、闇医者」
「は?」
「腹、減っただろ」
「あ!そうだよ!お腹空いた!
肉……肉が食べたい!!」
後ろからかかった声にぐるん、と振り向いて
急速に口腔に溜まった涎を啜る。
「おまえ、目のなかに“肉”って書いてあんぞ」
「タンとハツとミノが食べたいぃっ」
だって
韓国っていう焼肉有名な国で焼肉を食べたのはたったの1回こっきりだ!
後は姜の手料理ばっかりだった。
いや、有り難いんだけどさ。
「何処にでも付き合うから、肉、…………肉を食べさせてください」
「……わかったから、涎を拭け……」
ぶっ、と笑うブレイドさんの吹き出す音も気にならないぐらいに、空腹と疲労に襲われる。
飲み込んだ筈の涎が、どうしてまた溢れてきたのは分からなかったが、腕でそこを擦ると、確かに濡れていた。
介護が必要だ。
……でも、きっと心配いらないかな。
陣内が世話してくれるだろう。
乾いていた砂に、水が染み込んでいく。
いつかは豊かに緑が育まれるように
私にも何かが育つ日が来るのかもしれない。
……なんか随分ポジティブになったんじゃない?
マジで
いや、ほんと、セックスって、大事。
しかも
真剣に愛と欲を盛り込んだ
スペシャルなヤツが。
ほんと、大事。
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