1517人が本棚に入れています
本棚に追加
海の上に設えてあるウェディングパビリオンで行われるセレモニー。
そこまでの所謂バージンロードは長い桟橋。
モルディブのサンセットは
激しく燃える、朱(アカ)。
そう言えば、と思い出した。
ブレイドさんがここを一緒に歩くんだと。
なんだっけ、“おとうさん”だっけ。
プッ、と笑う。
まだ、夕焼けに染まる少し手前の空を見上げて
和んだ空気を吸い込んだ。
ほんとに結婚するのか。
まだ、ちょっと疑惑を持ち続けてる私は
どこか真実味に欠けるこのプランに首を傾げる。
いや、ここまで花嫁姿になっていてなんだけど。
いつの間にか聞こえてきた音楽は
私をパビリオンまで導く合図。
海の上には、私を死んでも離さないだろうイケ男。
仕方ない、行ってやるか。
それにしても、やっぱり暑い。
ブーケの持ち手に巻いたハンカチで額を押さえた。
「お待たせしました、参りましょうか」
「え?」
「ああ、有馬先生、本当に素晴らしくお綺麗です」
ブラックのスーツに白いネクタイ。
……デジャヴ、が起こった私の中で
笑うブレイドさん。
「な、何故」
すっかり忘れてた。
人生で着飾るのが2度目な事を。
「バージンロードは私がお供します。
これは、譲れません」
スイ、と腕を出し胸を張るブレイドさんは
また、その屈強な身体には似合わないくらいの朗らかな笑みを浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!