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たくさん食べろ、と言われたけれど。
これはいったいどうなってるんだろう。
「何故?」
首を傾げた目の前に広がる不可思議な光景。
「ああ、もう待ちきれなかったみたいですね」
着替える前にメインダイニングで写真を
と、そそのかされて来たここで見た景色は
何やら見知った顔がチラホラり。
あれ。
貸し切りだったよね、白石の。
ああ、いいのか。
白石だから……。
「遅い。
もうとっくに終わってたんだろが」
「代表、新婚ですから、なにかと忙しいことが」
「ベロベロしてただけだろう」
いやいや、クソ代表ザルが何故。
いやいや、どうして……
「望絵」
私が
「おめでとう」
この私が
この人無しでは、人生を語れないのは
百も承知。
周知の事実だ。
「ボス」
「馬子にもなんとか、どころの話じゃないな。
40には見えない」
それは余計なお世話だ、ボス。
どこかのブランドマークが付いたポロシャツのボタンが開いていて
未だに鍛えている胸元が逞しさを醸し出している。
ボスは
私の、人としての師。
きっと、それはこれからも変わらない。
「ボス、仕事はいいんですか」
「仕事よりも大事だろう」
この人はどうしてこういう事がサラリと言えるんだろうか。
「望絵の晴れ舞台の方が」
昔は熱苦しくて面倒臭い上司だった。
今も、ストレート過ぎて面倒臭い。
「お前……」
「なんですか」
「1年以上も無断欠勤した罪は重いぞ?」
「は?」
ボスが手元のグラスに入った液体を空にする。
普段あまり目にすることのないウェイターが
ここぞとばかりにそのグラス目掛けて新しい液体を注いだ。
「日本に帰ったら早速働きまくれよ」
「へ?」
ア然、とする私に飛びかかってきたのは
「望絵せんせー!」
「うっわ、ぁ!っ!」
「素敵!
ほんとに素敵!
素敵過ぎてビックリ!
ってかさ、どこに姿眩ましてたんですか!!」
「……な、なんで三原……」
「あら?唯一の後輩だと思ってますけど」
麻酔の妖精は、強かに微笑んだ。
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