ハッピーカルテ3

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超音波は、産婦人科には不可欠な検査法だ。 特に、この経膣エコーは 診察において革命を起こしたほど。 いや、これは確かに 革命だ。 これが高性能のカメラだったら マニアは大喜びだな。 いや、オレが最早大喜びだ。 「ねぇ、ちょっと陣内…… どうなってんのよ」 訝しげな望絵さんの声で、あ、と気付く。 画面なんて一つも見ていなかったからだ。 器械を突っ込んだそこをマジマジと眺めて やばいぐらいに掻き立てられる画に 開いた口が塞がらない。 「ちょっと、待ちなさい」 なんだ、その口調は。 目が血走っているのがよく分かる。 ほぼ瞬きをしないでいる自分に感心する。 この画を見ながら、夥しいくらいの血液が 勃起部分に流れ込んでいる自分に。 「あぁ」 また、気付いて やっと画面に目を向けた。 白と黒が織り成す映像。 超音波の当たり具合を調節する。 しっかり診ようぜ、陣内先生。 GS(胎嚢)の確認は早ければ4週には確認できる。 望絵さんの場合だと、もう胎児の心拍は確実に確認できるくらいの経過だろう。 綺麗な筋層。 その中に見つけた黒い空間。 オレの心臓が、違う方向へ走り始めた。
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