704人が本棚に入れています
本棚に追加
目を開けるとぼんやりと男の人が見える。
私の手に、大きくて温かくて
包み込まれている安心感がある手が添えられている。
「遥人……?」
違う、よく見たら、誠一さんだ。
整えられている髪型は乱れて
口も少し開けて寝ている。
いつものビシッとした格好からは想像ができない姿だ。
「この人だって、ただの人間なんだよね。ただ不器用なだけで」
人の数だけ、人への愛し方があるように
この人はこの人なりに美緒さんを愛していた。
みんな両想いになれたらいいのに。
みんな、幸せになれたら、いいのに。
だけど、誰かが傷つくのが恋だから。
自分を犠牲にするのが、時に愛だから。
「ん……」
「起きました?」
「え?」
「誠二の病室ですよ。まだ2人は帰って来ていないみたい」
「え!申し訳ない!」
「ん?何がです?」
「その手を、重ねてしまって」
「べつに何とも思いませんよw」
最初のコメントを投稿しよう!