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「兄さん、円花……ごめん」
「誠二!美緒!よかった、帰って来てくれて!」
美緒さんの表情を見れば分かる。
誠二は生きる選択をしたんだってこと。
「誠二、これから2人でこの家を変えていこう。俺は、お前に今までの償いとしてサポートを、お前は俺に、償いとして生きてほしい」
「うん……兄さん、ありがとう」
2人は初めて兄弟の抱擁を交わした。
兄弟であり、親友でもあり、ライバルでもある。
色んな思いを抱えながらも、2人の思いは1つ。
最愛の女性に幸せになってほしい。
「誠二……」
「円花、今まで本当にありがとう。俺、円花がいなかったら、日本に来なかった。そして、死ぬ間際に後悔していたと思う。美緒に会いたかったって、だから……」
“パンッ……”
私は思いっきり誠二の頬をひっぱたいた。
いきなり叩いたからさすがの誠二も驚いてキョトンとしている。
「痛いでしょ?生きているから、痛いの!生きているから、苦しいの!生きているから悲しくて、そして、嬉しいんだよ……」
「うん、俺、生きるから……生きるから、円花の悔しい思いや悲しい思いも全部受け止めて、生きるよ」
「ありがとう、誠二……うわぁぁぁん!」
涙って悲しい時にでるものだと思ってた。
だけど、悲しい時は意外と気持ちが追い付いてなくて
涙は思ったほどでない。
だからこそ、嬉しい時は、気持ちが溢れるのが止まらなくて
涙が止まらない。こんなに大声を出して泣いたのはいつぶりだろう。
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