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「はい。子どもSOSです」
『あの……、ちょっとね、虐待っていうのかしら……。ここでいいのよね?』
中年女性のおどおどした声が聞こえた。
「はい。どうしました?」
『うちのアパートの下の人なんだけどね、いつも夜になると子供が泣き叫ぶのよ。
うるさくて……』
「あぁ……。どんな様子ですか?」
『母親の怒鳴り声も聞こえるの。あれ、どうにかなんないかしら……』
「それは、毎晩ですか?」
『そうねぇ、昨日はとにかく酷かったわねぇ……。
ドアの外に子供が出されたみたいで『開けて、開けて』って泣いててね。
うるさくて、眠れやしない』
「あぁ。なるほど。それは、何時ごろでしょうか?」
既定の用紙に『家の外、追い出し』と記入する。
『えっと……、9時過ぎだったかしら。30分くらいなんだけどね。
ちょっと来て、注意してくれないかしらねぇ……?
母親がおっかなそうな人でね、ほら、下手に文句言って……。ねぇ?』
「そうですね、わかります。
それでは、お名前とご住所と電話番号を教えていただけますか?」
『いいけど、名前も言わなきゃだめ? このアパート代表ってことで……』
何度が宥めすかして、やっと電話相手の名前と番号を聞き出した。
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