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ーー翌朝
小鳥のさえずりが耳に心地いい……
「早く起きないと遅刻だよ、晃一」
囁いたのはひろだった。
着替えて出掛ける支度まで済ませている。
「気持ちのいい朝だな、何時?」
「7時30分を過ぎたところ。一応2回起こしたよ」
「げっ、ヤバイ」
慌てて布団をはね除け、全裸で立ち上がった。
遅くとも8時10分の通勤快速に乗らなければ、遅刻決定だ。
「朝食作ってあるけど、僕は先に食べたから行くね」
また無表情にくるりと背中を向けて歩き出すひろの腕を掴む。
「なあ、家事はちゃんと当番制にしようぜ」
「僕もそれを考えてた。帰ったら話し合おう」
『行ってきます』とひろは一人玄関を出て行った。
俺は新しいボクサーパンツを履き、クローゼットから手近なワイシャツに袖を通してひろを追いかけた。
「待てよ!」
階段を下りた踊り場で、バッグを肩に掛けたひろに追い付いた。
「……そんな格好で出勤するの?変態」
振り返ったひろの表情がクスッと和らぐ。
「もう遅刻確定でいいさ。忘れ物あるだろ」
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