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「いいから、出せよ」
「だ、っ、ちがっ……! しゅうじさ、やめ、ッ!」
「今更やめてって、それは無理だろ」
指の腹よりもちいさな、花屋が最も快がる場所を執拗に責め上げる。
爪の先でカリ、と引っ掛けるように刺激を与えた瞬間、花屋の腰は大きく上へ跳ねてそのあと全身を小刻みに痙攣させた。息を吐きだそうとしているだけなのだろうが、そこには身体の痙攣に同調するような音が響いている。その声は花屋が果てても尚刺激を続ける九条の指が動かされているあいだ中ずっと、鳴り止むことはなかった。
性器から勢いよく吐き出された精液と共に、透明な液体が性器を伝って流れ出る。九条の首に腕を巻きつけしがみつきながら、花屋は盛りのついた猫のように荒い呼気に音を鳴らして吐き出し続け、いつ果てているのかわからぬほどに彼の手淫に溺れて淫らな姿を晒し続け、みたびお願いだから、と紡いでは、張り詰めて先走りに濡れた性器を迎えて更に隠微な声を上げる。 それは明確な、花屋の意思だった。
こうして淫らな姿を晒して抱きしめられれば、許されるだろうか。
終わらない恋がしたいと望んでしまったことを。
こうして世界中どんな男よりも、まして女よりも、彼の下で淫らに喘いでみせれば忘れないでいてくれるだろうか。
二丁目にふさわしい、爛れた、あさましい男であると。
声が枯れるまで。意識が遠のくまで。
花屋の後孔は九条の性器を離すことなく、名前を呼ばれるたびに彼の唇に、首筋に、噛み付いてありったけのちからで抱きしめた。こみ上げる情に蓋を閉ざせば、そこには幸も不幸もない快楽だけが生まれる。
この男との最後にふさわしい、快楽以外の何も生み出すことのない最高のセックスだと、そう思ったのを最後に、花屋は吐き出す精液もなくなり、喘ぐこともできなくなり、身体をひどく汚したまま意識を失った。頬を伝ったひと筋の涙だけが、夕暮れから闇夜にかわった星に照らされ輝いていた。
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