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『…ジョス』
『……っ!』
低く落ち着いた声が耳に届いて、ジョスは弾かれたように顔を上げた。
振り向いた先に、…『彼』が立っていた。
車椅子でもなければ、年老いてもいない。
若々しい、再会を果たしたばかりの頃の…。
『ジョス』
『…ラウルっ…!』
再び名を呼び、微笑ってその手を差し伸べた彼…ラウルに、立ち上がったジョスはよろめくように駆け寄った。
『…ラウル…!!』
『…ジョス』
真っ直ぐにその胸に飛び込んだジョスを、ラウルが優しく抱き止めた。
『…やっと、また逢えたな』
『…ああ…!…ずっと逢いたかった…!』
互いの存在を確かめるように抱きしめ合って、噛みしめるように言ったラウルに答えたジョスの頬を涙が滑り落ちた。
『もう一度誓う。…もう二度と、お前を離さない』
『…ああ…!このままずっと、抱いていてくれっ…!』
濡れた頬を撫でそう告げたラウルに、ジョスは泣きながら、けれど、微笑って頷いた。
『愛してる。…ジョス』
『…俺も愛してる』
微笑み囁き合って、ラウルとジョスはそっと唇を重ねた。
沈む事のない夕日が、空と海を繋ぐ美しい世界で。
再び出逢った二つの魂は、溶けて混じり合い一つとなって…。
離れる事はない、…永遠に。
完
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