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「お前が戻ってくるなら、俺はこんな駄目なお父ちゃん、もうやめてやる!まっとうな人間になるからよおおぉ!」
冷たくなった留衣に、もう何度もそう泣き叫んだ。
もう一度笑顔を見せる事が無い事も、お父ちゃんと可愛い声で呼んでくれる事が無いことも、解っていてもそうせずには居られなかった。
留衣の父親は、娘の死後に遺書が書かれている日記を見つけた。
可愛い娘がイジメにあって居た事に、ショックとやりきれない怒りが込み上げて来た。
けれど、何よりも一番堪えたのは
娘が自分をどんな風に思って居たのかという日記だった。
小さな工場で工場長をしている父親が、社員を罵倒し、ストレスを解消していた事に留衣は気付いて居たのだ。
留衣にとって、父親は味方では無く、自分をイジメてるクラスメートと同じだと書かれていた。
だから父親にも相談できずに苦しんで居たのだ。
自分がそんな人間で無ければ、娘は相談してくれていたのかも知れない。
相談さえしてくれていれば、可愛い娘を守る事も出来ただろう。
これから先どれだけ後悔しても、留衣が戻る事は無い。
晴れる事の無い絶望と、悲しみだけが残った。
知らぬ間に己が作り出した負の連鎖に、自分自身の運命すら絡めとられた事に、気付く事は無い。
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