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「貴方の妻なんて、もうやめてやる!」
そう言って、康隆の妻、恵美(めぐみ)は家を飛び出した。
工場を辞めてから、危惧していた通り仕事が見つからず、康隆は腐っていった。
最初の頃は、必死に通っていた職安からも、日に日に脚が遠ざかっていく。
そんな夫を、初めは恵美も必死に支えていこうと頑張っていた。
けれど、決まりそうな仕事があっても、あそこはやっぱり合わなさそうだと帰ってきてしまう夫に、とうとう限界を迎えた。
まだ小学5年生の息子の事だけは気掛かりだったが、自分が居ない方が夫はしっかりしてくれるかもしれないという、わずかな期待もあった。
けれど、康隆は恵美が家を出ても変わりはしなかった。
イジメられて、次の職場でもそうなるのでは無いかと不安に思い怖くなってしまう程だったのだが、大人なんだからと理解して貰えない気がして、康隆は妻にも言えないで居た。
その事を知る術もなく、恵美は離婚届けを康隆に送りつけた。
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