梟は何も見ていない

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 僕と愛美ちゃんは愛しあっている。  僕はかれこれ何十通と言う手紙を毎日毎日書いて出している。常に愛美ちゃんのことばかりを考えて。今何をしているのか、どんなことを思っているのか。困ったことはないか。手紙を出す時だって、郵便ポストに入れるなんて横着はしない。 紳士たるもの、彼女のマンションに歩いて向かい、郵便受けに入れるのだ。プレゼントを送る時もそうだ。きちんとメッセージカードも添えて、その後で送ったと言う合図を電話でする。この時も注意しなければならないのが、愛美ちゃんにも私生活と言うものがあるので、それを妨害してはいけないのでワンギりで済ませる。 幸い彼女からは否定されたり拒絶されたりしたことは一度もない。これはきっと僕の気持ちを彼女がキャッチしたという事だと僕は思う。 それだけでは駄目だ。愛美ちゃんに言い寄ってくる悪い虫から守らなくてはならないので、僕は望遠鏡でそっと見守る事にした。 愛美ちゃんは丁度、向かいのマンションに住んでいて距離もそんなに遠くない。ベランダから彼女の部屋の様子を見張る。見張り中も腹が減ったり喉が乾いたりするので、マックのバーガーとコーラのLは欠かせない。お気にいりはマジキチセットだ。  愛美ちゃんはシャイな性格だ。  カーテンを閉めているので、そこからは彼女のシルエットしか見る事が出来ない。愛美ちゃんの影は両腕を体に隠し、ゆらゆらと揺らしながら、まるで脱皮するかのように、服をぽいと投げ捨てた。そして長い黒髪を首を振りながらほどくと、垂れた髪をふわりと肩にもたげた。続いてパンツからストッキングまで実に見事で、実に美しく脱皮すると、部屋の隅っこまで向かう。  きっと仕事を終えて帰宅して来たのだろう。  今日もお仕事お疲れ様。僕がずっと見張っているからゆっくり休むんだよ。  暫く愛美ちゃんがシルエットを見せなくなった。入浴してるんだろう。僕がプレゼントした薔薇風呂のセットを使ってくれているんだな。きっと。スーパーやなんかで売ってるのでなく、僕が摘んだ薔薇の花から一枚一枚丁寧に千切って作ったんだ。
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