梟は何も見ていない

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 犯人は僕が到着する迄の間、部屋の証明を消していたようで真っ暗だったが、タイミングを見計らったように灯りは点けられた。 僕は開かれた視界の中で目に飛び込んで来た光景に言葉を失った。  愛美ちゃんの姿はなく、部屋にいたのはスーツ姿の男だけだ。  「なる程。お前がストーカーか」  男は僕を見ると唐突にそう言った。  「ストーカーはあなたでしょう。愛美ちゃんはどうした?」  「俺は探偵だよ。金城愛美に雇われてお前の事を調べてただけなんだが」  探偵? 愛美ちゃんは探偵なんて雇っていたのか。  「数ヶ月前からお前に嫌がらせを受けて困っていたそうだ。手紙だとかプレゼントだとか無言電話とか。そこでどんな奴が嫌がらせしてるのか調べてみた。金城と同じ階のマンションに棲んでいる奴は誰か。すると、お前の部屋に辿り着いた訳だ。気付かなかったのか? カーテンが閉まっていたことに。あれはお前に観られるのが厭だから閉めたんだそうだ」  僕に観られるのが厭だから?  嘘だ。そんな筈はない! 何故なら僕と愛美ちゃんは愛し合っていたんだ。  「そんなこと......」  「本人に訊くか? お前とは口も訊きたくはないみたいだが」  「じゃあ。さっきのは何だったんだ?」  「一芝居打ったのさ。管理人から合鍵を借りて、マンションの住人には、調査の為だと黙って貰っている。そうして殺人鬼を装ってお前を誘きだしたんだよ。有り難いことに、お前は潔く監視していることを自白してくれたしな。まあ計算通りだが」  詰まり、僕は探偵を殺人犯だと思い込んでいたから、自分は事件の目撃者だと信じこまされていた訳だ。僕は探偵にまんまと嵌められたということか。  「そんな......」  「ついでに、殺人鬼の芝居を打ったのには他にも理由がある。お前に武装させない為だ。抵抗すると次はお前もこうなるという見せしめとしてな」  この探偵はそこまで考えてやっていたのか。僕の苦労は何だったんだ。  「然し、お前は運がいいな。俺は探偵だからお前を逮捕する権利はない。俺の仕事はここまでだ。どうする? と言いたいが、残念だ」  探偵はカーテンを開けて外を眺めた。  大勢のパトカーが、ビルの周りに集まっている。  
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