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夕食が終わり、家族全員でテレビを見ている時だった。
父さんがソワソワしながら皆に声をかけてくる。
「飴かなにか無いか?
口が寂しいんだ」
最近禁煙を始めた父さんが、口の寂しさを訴えた。
「あ、そうだ、良いのがある」
双子の姉が父さんに声をかけ、居間の隅に放り出されたままの旅行鞄から飴の包みを取り出し、母さんが持ってきたガラスの容器に包みの中身を入れる。
ガラスの容器を両手で持ち、中に盛られた色とりどりの飴を見ながら、父さんが姉に声をかけた。
「綺麗な飴だな」
「でしょう!
向こうで天然素材100パーセントってうたい文句で売っていたから、買って来ちゃった。
で、これが修学旅行のお土産ね」
父さんは容器に盛られたカラフルな飴を一頻り眺めたあと、テレビの前のテーブルに置く。
テーブルの上に置いた容器の中の飴を掴もうとする、父さんの指先を見ていた僕は、飴の上にいる者に気が付き声を上げた。
「あれ!?な、なんだ?何かいる」
「え!?虫でもついていた?」
僕の声で姉が、父さんが伸ばす指先の前から容器を取り上げ、中をじっくりと眺める。
「何もいないじゃ無い!
もう、脅かさないでよね」
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