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「すみません。誰彼構わず言うわけにはいかなかったので……」
「相手が男だから、どうせ性癖の壁に阻まれて途中で破綻すると思って、様子見てたのに!」
「せ……性癖って、女の子がそんな言葉使うのは、」
「それが実は女なんて、反則だわー!」
僕の言葉なんか丸無視で、わあっとカウンターに伏せて泣き出す始末。
どうしよう、もうすぐ開店しなければいけないのだが。
時間も気になる、かといってアカリちゃんを泣かせて放置したまま仕事するわけにもいかないし。
泣き伏す彼女の後頭部を見ながら、カウンターの隅に隠してあった携帯をそろそろと指で引き寄せる。
「それにっ!!」
「うわっ、はい、なんですか!」
「慎さん確かに綺麗だけど男受けするのは絶対私の方!」
「そ、そうですね。僕もそう思います」
「でも慎さんくらい綺麗なら、もっといい男の方が似合うじゃない」
「そんなことは」
「なんで陽介くんなの」
歯に衣着せぬ物言い、と言おうか。
陽介さんの周囲には、物怖じしない女性が多いのだろうか。
彼女然り、翔子さん然り。
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