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「え、なんで。浩平くんが」
「僕が連絡しましたから。今日はデートの予定でもあったんですか? すぐ近くにいらしたみたいですよ」
そう。
彼女と浩平さんが付き合っている、というのは先日、浩平さん自身から聞いた。
ただ、アカリちゃんは未だに陽介さんに未練があるとわかっていて、のことだと言うから、人の想いというのは簡単にいかないのだなと、つくづく思う。
両想いというのは、まるで奇跡のような現象だと改めて気付かされる。
カウンターを出て扉に向かう途中、バツが悪そうな表情を浮かべた彼女に恨めしそうに睨まれてしまった。
「……知ってて、黙ってるなんて」
「すみません。ですけど、はぐらかすのもいけないと思って……」
ぶすっと膨れてしまったアカリちゃんだが、浩平さんが来たと知って幾分大人しくなった。
ただ、僕が思うにアカリちゃんも、浩平さんに対して何の気持ちもなければ付き合ったりしないと思うのだ。
だからきっと、先ほどの「もういいけど」という言葉も、決して嘘ではないんじゃないだろうか。
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