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どうせもうすぐ開店だし。
何かお作りしましょうか、と浩平さんとアカリちゃんに尋ねたのだが、二人はレストランの予約があるらしくすぐに帰って行った。
浩平さんがひたすら申し訳なさそうに頭を下げていたから、また改めて二人で飲みに来てくれそうな、そんな気がする。
「陽介さん」
「はい、なんすか」
開店前のあと僅かな数分、今のうちだと言わんばかりにいそいそとくっついてくる。
スツールに腰を預けて、足の間に僕を立たせて腰を抱き寄せると、ちゅう、と頬に吸い付かれた。
満面笑みの、嬉しそうな顔。
こんな笑顔を見せてくれるのは、僕にだけだと自負してはいるけれど。
「あんまりへらへらしないでください」
「ええっ、すんません!」
あんまり余所で愛想を振り撒かないで。
とは、あからさまには言えない僕。
こんな気難しい僕を、丸ごと全部受けとめてくれるのは陽介さんしか居ないと思うし。
陽介さんで良かったと思う。
「おーい。いちゃつくのは後にしろよ」
「ぎゃあっ?佑さん?!」
「あ、佑さんこんばんわ」
「こんばんわじゃねぇよ早くうちの従業員解放しやがれ」
「い、いつからっ?!」
「浩平らと入れ違い。お前ら二人の世界作りすぎなんだよ」
「違う!絶対足音忍ばせてるよな?!」
「えー、んなわけねぇだろぉ」
絶対嘘だ!
にやにややらしい顔を浮かべあからさまな嘘をつく佑さんに、カウンターに置いてあったダスターをぶん投げた。
End.
※※※※※※※※※※※※※※
次、佑さん。
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