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俺と真琴は、複雑な関係だったように思う。
いや、関係は簡単だ。
元嫁の妹。義理の兄妹、それ以上の説明のしようがない。
だが、真琴に抱いた感情はただそれだけではなかったことは、自分でも気が付いている。
それは、俺が唯一あいつが心に傷を負ったあの夜を知っているから、というのも勿論ある。
責任感、何もしてやれない罪悪感、やるせなさ。
見守ってきた、という自負。
そんなものも手伝って、親愛の情は深い。
だけどそれだけでもない。
妹のように可愛いと思ったが妹ではないし、娘のように先行きに心を砕いたが娘でもない。
ずっと男のままで生きるよりも、どこかで真琴に転機が起こることを祈ってはいたが、このまま見守り続けることになんのかな、となんとなくそう思ってた。
だがある日、そいつは突然やって来た。
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