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ダン!
と感情の全てをぶつけるように、壁に拳を当てた。
「ほんとに、篤が」
「真琴さんから、聞いたんで」
真琴が、実家に居つかないのは、男装してることをあれこれ詮索されるのを、嫌ってのことだと思ってた。
この数年、実家の話になった時、幼馴染の話題が出た時、結婚式の招待状が届いた時。
真琴は、どんな顔をしていたか。
思い出そうにも、思い出せない。
「あの、クソガキがっ!」
「真琴さんはとにかく、詮索されたくなくて大事にして思い出すのも嫌で、だから佑さんにも言わなかったんだと、思います」
腸が煮えくり返る。
あのクソガキにも、気付いてやれなかった自分にも腹が立って仕方がない。
「すんません。佑さんにも、これから真琴さんがあいつに関わらなくても済むように協力してもらいたくて」
「当たり前だ! あのクズが、どういう神経してんだ、真琴に乱暴しといて、あの野郎……」
「それなんすけど……」
陽介が、一度躊躇うように言葉を止めた。
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