717人が本棚に入れています
本棚に追加
「真琴さん、最後まではされてないっす。寸前で逃げ出せたけど、佑さんには誤解させたままだと思うって……気にしてました」
……は？
ぽかん、と間抜けな表情だったろう。
陽介の言葉を一度頭で反芻して、徐々に力が抜ける。
「さ、されてねえ？」
「……っす。詳しくは、俺も聞いてないっすけど」
そうか。
犯られてないのか。
……そうか。
「そうか……良かった」
「いや良くないっすよ！」
「わかってるよ、でも、それだけでも、良かった」
わかってるよ、真琴が傷付いたことには変わりねえ。
けど、せめて、それだけでも。
「そか……そうか、良かった」
「え……佑さん……」
泣いてんすか、と戸惑った声で聞かれて、うるせえと答えた。
良かった、あんなクズみてえな男に犯されたんじゃなくて。
本当に、良かった。
心底、ほっとした。
そんで、俺も、もう保護者引退だ。
「お前、頼むな」
「はい？」
「真琴のこと、頼むわ」
俺に話せなかったことも、陽介には話せるんだ。
もう、俺が居場所を作ってやる必要はねえ。
最初のコメントを投稿しよう！