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くそ!
やめろ!
なんなんだ二人そろって。
「じゃあ」ってさらっといなくなりゃあいいものを。
「大事にします」
「おお」
返事する声が震えちまうのを、自覚する。
無駄に咳で誤魔化して、今度こそ煙草に火をつけ深く煙を吸い込んだ。
「いっぺんでも泣かしてみろ。俺が殴りに行くからな」
「っす」
「親父さんが行くより早えぞ」
「絶対、幸せにします」
だろうな。
この先何があったって、お前ら二人はなんだかんだ、幸せになんだろうなと思う。
煙草の煙を避けるふりで顔を背けて、「早く行けよ」と再び手を振る。
それで漸く、扉の閉まる音を聞く。
やっと一人だ。
やっとこ、面倒のかかるヤツを手放した。
ちーとは、寂しくなるに違いないが、これで身も軽くなるってもんだ。
そうそう。
ちーとは。
ちー、とは。
寂しいに決まってんだろ!
娘嫁に出すときってコレより寂しかったりすんの?!
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