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無駄に予行練習させられた気分だ。
徐に携帯電話を手に取って、画面を指でスライドさせる。
咥えた煙草の煙が目に染みて、顔を傾げて避けた。
結婚式とか絶対無理だな。
俺インフルエンザになろう。
「真由美ちゃん? 俺」
『佑さん? どしたの? そっちからかけてくんの珍しいね』
「ん? 顔が見たくなったから。飲みに来いよ。……できれば閉店ギリギリに」
『えー……どうしようかな』
「来いって。ギリギリじゃなくても真由美ちゃん来たらそこで閉店にするよ」
『また、そういうこと言って……行ってもいいけど、今日は無理』
真由美、佑。
互いに名前と大体の年齢ぐらいしか知らない。
たまに時間を合わせて会うその女は、サバサバとした性格で気が楽でいい。
だが、今日に限って何か歯切れが悪かった。
「なんで」
『ん、今ちょっと、実家に帰ってんの』
「なんだそうか。いつ戻る?」
『あー、なんかやな感じ。普通、何かあったのかー、とかそういうこと聞かない? ほんとヤることしか頭にないよねー』
んだよ。
今日は機嫌悪いのか。
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