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来店早々オヤジ二人に爆笑されては、尚更機嫌が治るわけがない。
「なんなんすか」とぶつくさ文句を言いながら、梶さんの真横のスツールに腰かけてギロギロと目つきの悪い陽介さんだったが。
「結婚するんだってね」
との言葉にようやく、ほんの少しだけ表情が緩和する。
「聞いたんすか」
「ついさっきね。おめでとう」
続いた祝福の言葉に更にデレッと締りのない表情になり、陽介さんは得意げに僕の手を取った。
さすがに気恥ずかしくて「ちょっと」と非難しながら手を引き抜こうとするけれど、いつもながら彼の握力にはかなわない。
っつーか、他に客がいないからいいけれど、秘密も何もあったもんじゃあないな。
「あざっす。もう真琴さんは俺のっすからね!」
「はいはい。それは重々承知しているよ」
「っつーか、あんまり驚かないんすね」
「ああ、女性だってことは随分前から知ってるしねぇ」
あ、と嫌な予感がした。
それを言ってしまえば、どうしても「いつから、なぜ」という話に向かってしまうではないか。
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