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「今も、まだ彼のことが好き?」
その問いに俺は、分からないと答えた。
「俺はずっと付き合ってるつもりでいた。でも、あいつは違ってた。・・・違うって分かって、気持ちが冷めたのも本当だけど、どこかでまだ、あいつを気にしてるのも本当だから・・・分からない」
「好きだ、付き合おうって言って来たら・・・彼と付き合う?」
「それはない」
俺は断言した。もうやめるって決めたのは俺だ。それを、覆すつもりはない。
「じゃあ、僕の出る幕はある?」
「・・・えっ?」
「このまま継続して、広大を口説いてもいい?」
「えっ?・・・あれって、本気だったの?」
「もちろん。広大にプロポーズされてから、ずっと僕の心は広大に囚われてるんだよ?」
俺は、その言葉に目を瞠った。
「広大が、大きくなったら迎えに行くねって、約束したんだけど、覚え・・・てないみたいだね」
苦笑する彰兄に、コクコクと頷く。
「ずっと悩んてた。小さな子の言うことを真に受けて何しに来たの?って、広大に拒絶されたらどうしようって」
「そ、そんなことしない」
「本当?本当なら嬉しいな」
「あ、彰兄は、初恋の人だから」
「昔の甘酸っぱい想い出になっちゃった?」
ともすれば、彷徨いそうになる目を覗き込まれた。
「それとも、まだ間に合う?」
甘い声で囁かれ、その瞳に囚われた。
「だったら、逃がすつもりはないんだけど」
どうする?問われた言葉に、あっ、えっ、と、意味不明な言葉で返した。彰兄は、挙動不審に陥る俺をクスリと笑った。
「決められないなら、僕が決める。逃がして上げないから、覚悟してね」
俺の鼻をカプリと齧り「捕まえた」甘くとろとろに蕩けそうな顔で笑った。
終
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