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世の中には、人の想像のつかぬものも確かに存在する。
それが露店商の商売道具になることも有り得るのだ。
その露店商は、夏祭りの出店にいた。
普段は、賑やかな都会で細々とアクセサリー類を扱っているのだが、夏祭りのこの時期のとある夜宮の日だけ、この露店商は特別な商売をする。
夜宮の賑わいから少し離れた場所にろうそくがずらりと並んだその店の名は『火の玉屋』という。
賑わいから離れていることも、ろうそくがずらりと並んだ怪しげな佇まいからも客は、そうそう訪れない。
店主は、三十代くらいの細身の男だが、この者も変わっていて、たまに客が訪れると「もう、やめるから!今年だけだから!」と毎年のように言っていた。
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