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こんな気味の悪い出店だが、来る客は毎年の常連だ。
「兄さん、そんなこと言うなよ。今年も火の玉一つ頼むよ」
見知った顔はそう言って、店主にろうそくに火を付けてもらい、そのろうそくを大事そうに抱えて家路につくのだ。
「ああ。今年も繁盛かよ。もう、やめたいのによ……」
そんな風に店主は、愚痴る。
さて、火の玉屋とは何なのか。
皆さんは、火の玉と聞いて思い浮かべるのは何だろう。
妖怪だろうか。それとも、人魂だろうか。
それを店主に尋ねたら、気兼ねなく「正解」と言うだろう。
さてさて、今年も新規の客が訪れたようだ。
どうやら、迷子の男の子のようだ。
泣くまい泣くまいと唇を噛んだまま、火の玉屋に行き着いてしまったようだ。
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