第3章

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「感じたんだな」 断定されて秋月が視線を逸らした。ふーんと葛見が感心する。 「お前みたいなやつでも、しかも男相手にその気にさせるって、なかなかすげぇな」 「……葛見」 試してみたいもんだと呟く葛見を秋月が睨みつける。その瞳を見返して葛見が小さく笑った。ポケットから取り出した煙草を咥える。 「で、夏目とは?」 さりげなく聞かれて、しかし秋月が言葉に詰まる。 「…………」 秋月の口が開いては、また閉じる。葛見が視線で促した。 「……キス、した」 「それだけ?」 「それだけだっ!」 葛見の意外そうな顔に、なんだと秋月が睨み返す。 「いや、あんまり意識してるから、もう少し先までいったのかと……」 「いくかッ!」 秋月が憤死寸前の声を出した。 「……ともかく、夏目には嫌な思いをさせてしまった」 膝の上で組んだ手に視線を落す。 「どうかな」 ふーっと天井に向けて煙草の煙を吐き出す葛見に、秋月が眉を寄せる。 「嫌に決まってるだろう……男と、なんて」 「―――お前は嫌だったのか?」 答えようとして、秋月が言葉を途切らせる。葛見が灰皿を探して立ち上がった。 「……俺は……クスリ打たれてたし……」 困った顔で視線をさまよわせる秋月を一瞥して、葛見が灰皿に灰を落とす。答えになっていないぞと呟いた。 「まぁあれだな、思春期のガキじゃあるまいし、キスのひとつやふたつ、どうってことないさ」 「それは……そうだが」 「お前が気にするほど、やつは気にしてないかもだぜ」 秋月がひとつ瞬きをして顔を上げる。 「そう、か?」
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