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顔をあげた男は少し目を見開いてから、ほとんどこちらを見ることなく、すみません、と一言呟いて走り去っていった。
一瞬しか、しっかりと顔を見ることが出来なかったが、どう見ても、例の高校生。携帯で時間を確認すると二十二時になろうという時間だった。
「……まあ、高校生だしな。」
少し心配になったが、自分が高校生だったときのことを思い出して一人で納得する。
やっと家についたとき、コンビニで買ったビール片手に、やはり思い出すのは高校生のことだった。迎えに来る姿が目立っていた事から気になるようになっていたのだが、よくよく考えると、母親の姿を見たことがないことに気づいた。彼の弟は、年中組であり、自分は今年からここの保育園にきたばかりだった。去年の入学式には来ていたのだろうか。
そんなことばかり考えていると一本の電話が入った。
「もしもし。」
『もしもし?私だけど。』
「……あー、ごめん。誰だっけ?この前水没してデータ消えてんだわ。」
『はー?私よ私!!栗原!』
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