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氷のピクチャレスク
雪。
雪が降っている。
六花。氷の結晶がさまざまな形で、ひらひらと舞う。角柱状、星状、放射状、砲弾状、鼓状、鞘状、樹枝状、羊歯状、針状、扇状、束状、板状、立体状にくっきりと象られ、シンプルな構造の幾何学模様を描く。それらは複雑に広がり、重なり、シンメトリックに、あるいは非対称的に、連鎖し、交差し、なかには不規則に四角形、多角形、菱形をつくっている。
白と黒。
白地と黒い線の平面。
ひらけた空間に延々と広がる平原と、なだらかな丘と、その向こうに連なる切り立った山々の峰。
風は穏やか。
時の止まったモノクロの世界。
空に浮かぶ太陽がぼんやり光を放ち、たなびく雲から無数の雪片がゆっくり落下してくる。その小さな、小さな塊ひとつひとつ、綺麗にフォルムが描写されていた。
便箋に鉛筆でデッサンされたその風景画には、作者のサインと一緒に八月の日付と題名が記されていた。
夏に降る雪──と。
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