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そのままスマホの画面で時間を確かめてみれば、時刻はそろそろ7時半を指すところだ。1時間近く、こんな場所でひたすらキスしていたことになる。
「……よし。じゃあ、ちょっと時間空けたら、戻るか。すぐ戻ったらみんなと出くわすかもしんないし」
「……………かしわぎ」
「……ん?」
「かしわぎって……」
「----好きだったんだろな、咲哉のこと」
「----っ」
「……なんとなく、気づいてたけどね」
「っ、うそっ!? なんで!? いつから!?」
「分かんないけど。3年なって、わりとすぐくらい?」
「うそだ」
ふるふると首を振った咲哉が、痛そうな顔をする。
「だって柏木。オレのこと、ずっと睨んでたし」
「……自分でも、訳分かんなかったんじゃない? 男同士だし」
「……」
「なに。柏木が良かったの?」
「っ、ちがっ」
ちょっとした嫉妬心で呟いた台詞にハッと顔をあげた咲哉が、そんなんじゃないよと必死で言い募るのが可愛くて。
「なんだー。オレかなしいなー」
「ちがっ! って、いってるっ」
棒読みで笑って言ってるのに、素直に真に受けてオロオロした顔で必死に首を振るのが、小型犬みたいで可愛い。
「冗談」
囁いて笑って見せたら、もうっ、なんて今にも泣き出しそうな顔で怒るのも可愛い。
ごめんごめんと笑って、怒ってても可愛い頬に柔らかいキスを贈る。
「…………ずっと、嫌われてると思ってた」
「柏木に?」
「……いつもオレのこと。睨んでた」
「……咲哉もさ。さっき言ってたじゃん」
「何を?」
「男同士なのに、付き合っていいの? って」
「言った」
「同じだよ。柏木も、男同士だからって……たぶん、咲哉を好きだなんて認められなくて。だから、ずっと、睨んでたんだよ。……まぁ、オレが咲哉に構い過ぎてたから、余計にイライラしたんだろうけど」
柏木を煽ったつもりはなかったけれど、過剰に牽制したような気も、しなくはない。
「……さっきはホントに……恐くてさ。……柏木、見たことない顔でオレのこと見てた。なんかヤバいなって。思ったのに。腕……全然びくともしなかった」
「……マジで、あの時は焦ったわ。気付いたら咲哉も柏木もいないんだもん。したら、腕捕まれてどっか連れていかれそうになってるし」
「うん、ごめん。……でも、オレ。あの時さ、てっきりホントに殴られるのかと、思ってたんだけど……」
告白、とかだったのかな。
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