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クラスメイトみんなの仲がいいのは、今に始まったことじゃない。
大多数のノリのいい女子と、それに反対を唱えられないおとなしい上に数も少ない残りの女子。ノリのいい女子と仲良くなりたくて必死な男子と、ガツガツはしてないものの、楽しければ何でもいい男子と。
そこからはみ出たオレをフォローしてくれる隼人は、オレとは幼なじみでクラスの中では盛り上げ役と言っていい。
きっと隼人がいなかったら、オレはクラスにも馴染めずに空気として扱われてたと思う。
「楽しみだなぁ、みんなで浴衣でお祭りっ」
「ねー、隼人の浴衣姿めっちゃ楽しみー」
「ちょっ、隼人だけかよ」
「えー? だって、ねぇ?」
情けない声で大袈裟に騒ぐのは、オレとは折り合いの悪い柏木だ。
ノリを乱すオレを毛嫌いしていて、そんなオレをフォローして女子から好かれている隼人のことを敵視している。
ちら、とこっちを見た柏木が、イライラした目でオレを睨んだ後に、女子に向き直って笑う。
「隼人なんかよりオレのが似合うよ、浴衣」
「似合わないなんて言ってないじゃん」
「てゆか柏木うざいー」
「ひどっ」
きゃははは、なんて盛り上がるクラスメイトをよそに、もう一度溜め息を吐いていたら。
ぽふ、と頭に優しく乗せられた手のひら。
「ホントに嫌だったら言えよ。ちゃんとフォローしとくから」
隼人の心配そうな目に見つめられて、ううんと首を横に振る。
「行くよ。お祭りは好きだし」
「そっか」
わしわしと頭を撫で回されて、やめろよと笑う。
やっと笑ったな、と優しい声が上から降ってきて。
見上げた先にいたのは、照れ臭そうに目を細めた隼人の、くしゃっとした笑顔だ。
訳もなくドキドキしたのは、なんでなんだろう。
なんて首を傾げていたら、まるで人を殺そうとするみたいな強い視線で柏木に睨み付けられて。
「んじゃ、とっとと浴衣買いに行くか」
こちらも険悪に睨み返そうとした時に、隼人のそんな声が聞こえて。
柏木が先に視線を逸らして、うやむやになった。
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