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「ただいま~」
低く響く声と大きな足音と共に食堂に入ってきたのは、屈んで入ってこないと高さ2メートルはある扉の枠で顔面強打する様な作業服姿の大男だった。
ジャイアント馬場、イースター島のモアイ像、フランケンシュタイン等を連想させる顔をした、2メートル20センチはあろうかと言う大男は、俺を見ると、意外にも人懐っこい感じで(見た目通りの低い声で)話しかけてきた。
「あ、あんたが美人さんが言ってた雑誌の編集の人だね。ま、ひとつ宜しく書いておいてくれや。じゃ、また後で飲もうぜ。」
彼はそう言うと、またドスドスと足音をたてながら青扉に屈みながら入っていった。
「彼が「2」の部屋の入道さんよ。体は大きいけど優しいから安心してね。大酒飲みなのがたまに傷だけどね。」
驚きで身動き出来ないでいる俺の肩を美人さんは叩きながら慌てて言った。
「早く着いて行って部屋の中の様子でも写真撮んなきゃ!」
俺はいきなりなキャラクターのインパクトで身動きする事もできなくなっていたが、ギクシャクと体を動かし、青の扉側の「2」の部屋へ向かった。
ノックをすると、彼はすぐに扉を開けた。
「来ると思ってたぜ。まぁ見てくれや。」
今日取材が来ると言うのはここの住人皆が知ってた筈だが、彼の部屋は脱ぎ捨てた服や、読み捨てた雑誌、お菓子の袋やビール缶等が散乱しまくっていた。
よく見ると、部屋の隅にはベッドではなく、布団が3組程乱積みしている。
「…すごい部屋ですね……なんでベッドが無いんですか?」
俺の質問に、彼はガハハと大声で笑いながら答えた。
「この体でベッドに寝れるはずがないだろ。」
妙な納得をしながら、俺は写真を数枚撮ると、食堂に戻った。
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