第2章 村崎乱丸と言う男

2/2
前へ
/49ページ
次へ
「私」が、二人の住む場所から一番近く、過去に数回食事を食べたファミレスに着いたとき、丁度乱丸もバイクで着いたところだった。 しかし、本当に見れば見るほど、ある程度いい意味で変わった人間だ。 身長はさほど高くなく、しかもかなり痩せている。 猫背なのでより一層小柄に見えるし、話し相手の顔を見るときは上目遣いになるのだが、歳の割には若く見えるし(SNSで知り合った当時が『20代後半』と書いていたから、今はアラサーか?)、丸い目で、子供の様な好奇心に満ちた目付きは、嫌悪感よりむしろ好意を持てる。 「タイミング良かったね。じゃ、入ろっか?」 乱丸はそう言うと、ウインドブレーカーを脱ぎながら店内に入って行こうとした。 「あ、まだ髪を切ってないの?」 「私」の質問に、乱丸は腰付近まで伸ばして三つ編みにし、ウインドブレーカー内に収めていた髪をしごきながら、ちらとこちらを見て答えた。 「これ?だって女の人は髪を伸ばしてても仕事出来るのに、男は髪を伸ばしてたらいけないって、何かおかしいじゃん。認めてくれる職場探し中だよ。」 『こんな変なこだわりさえ無ければ、学歴や人柄を考えたらちゃんとした仕事に就けるのに、勿体ないなぁ。』 そう考えながら、「私」は、乱丸に続いて店に入った。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加