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二時間ほど揺られて、着いたのは海だった。
どこの海かは分からないけど、とっても寒いので国境の壁はとうに越えていると思う。
「竿出せゴルァ。物置にあるゴルァ」
「船長は竿を出して来い、物置にあるよ、と言っている」
「いや、通訳要りませんよね?」
物置にはボロボロの釣竿がいくつか、他にも仕掛けがいろいろ。
でもワタシは普通の女の子なので何も分からない。
「え~っと、持ってきましたよ」
「ザッケンナゴルァッ!!よく出来ましたゴルァッ!!」
「褒めるのか怒るのかどっちかにしてくださいよ!」
ワタシ達は竿を船上から垂らす。
どう考えてもマグロが釣れる様な竿ではないんだけれど……。
「かかったゴルァッ!!大間のクロマグロだゴルァッ!!」
ここは大間では断じてないと思うんだけど。
「大物だな。シュリナ見てみろ、竿のしなりがハンパない」
「ほんとですね。竿が直角になってるところなんて初めて見ました」
と言うかもう折れている気がする。
ここまで来たら素直に折れてくれたほうが気持ちがいい気がする。
「釣り上げッゴルァッ!!」
オラつき病の船長が渾身の力で引っ張り上げると、丸々と太ったセイウチが船上に投げ出された。
ダレダッタカナー。
大間ノマグロトカイッテタノダレカナー。
「ザッケンナゴルァッ!!セイウチッゴルァッ!!腹斬ってユビツメッゴルァッ!!」
船長がオラついている間に、セイウチはあっかんべーをして海に戻っていった。
珍しいものが見れてちょっと幸せ!
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