44人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「ガラ……」
呼びかけたのは、私の声ではなかった。もっと年老いた、深い男性の声だ。
声の方を振り向くと、太い柱が目に入った
。その柱の陰から、ゆら、と黒いスーツ姿の男が現れる。
堀の深い異国の端正な顔立ちに、ぎょろりとした目、ぴったりと後ろへなでつけた短い黒髪。
なにより目を引くのは、その黒髭だ。
よほど気に入っているのか、鼻の下にコミカルなほどピンと立ててある。
自分が唯一無二の存在であることを人々に知らしめたいかのような自己主張だ。
ひどく奇妙な、威圧感のある男。
最初のコメントを投稿しよう!