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次に目が覚めた時、俺の耳に届いたのは罵声だった。
「お、おい!なんてことなんだ!!この子の髪を見ろ…!
…なんて子を産んだんだ、お前は…!」
泣き崩れる"父"らしき姿。
その頭には、触れたらすぐに赤い血が流れてしまうように鋭利なツノ。
大声をあげて泣く姿は、その顔からは想像もつかない。
「…この子は、お前が命に代えて産んだ子だ。
絶対に隠し通してみせる。
絶対に…!!」
けど、それは無理だったようだ。
"最強の鬼"という異名を持っていたらしい、俺の父だったらしい人の力を持っても…魔界では通用しなかった。
俺の存在は…俺が産まれて1年経った頃に、父の友であった鬼が俺に食事を持ってきたのを見られていたことによってバレてしまった。
父は、殺された。
最後まで俺を見つめていた。
俺の目の前で、紫色の炎に包まれて、死んだ。
1歳と数ヶ月だった俺は、すぐに隔離された。
けど別に対応が粗雑だったわけではない。
魔界の人は皆優しかったし、隔離されただけで俺に暴行を加えもしなかった。
確かに俺の父を殺した魔界の多くは、切なそうな顔を押し殺していた表情だったように、今想う。
俺は隔離されている。
世界から。優しさも愛ももらった。けど隔離されている。
理由は簡単だった。
この世界で、俺は…
この世界でただ2人の内の1人である、"生まれてはいけない子"だったのだ。
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