ep0.生まれてはイケナイ

6/7
前へ
/11ページ
次へ
その声は、俺と同じぐらいの子供の声だった。 隠し部屋… …魔王が、自らの子供を守るために作った、秘密の部屋。 意外に広いその部屋のベッドの上に、少年はいた。 真っ黒の髪に、黒い目。 前世では普通だったその姿に、懐かしさを覚えた。 「…生き残ってるヤツが、いたのか?」 驚いた顔をしているその少年のもとへ、俺は小走りで行った。 びく、と肩を揺らした少年はベッドの上で後ずさりをしている。 そんなこと構わない。 俺はベッドの脇に行くと、持っていた手紙を無言で渡した。 受け取った少年は、読み出す。 だんだんと目の色が変わっていく。同じ黒なのに、深い深い黒へと変わっていく。 そして読み終えた時、彼は無言で俺に手紙を渡してきた。 「…お前、俺と同じなんだな」 ははっと笑った少年に、俺は頷く。 そう。俺とお前は、同じだ。 『……嫌われてもいいから、 立ち向かえ。決して正義だけが勝つわけではない。 復讐を、してやれ』 「…しようか。 復讐、さ」 彼の言葉に、なおも俺は頷く。 笑みを絶やさない、けどとても空虚な笑みを浮かべている彼…魔王の息子に。 「…お前の名前は、なんだよ」 彼の名は既に手紙で知っていた。 俺が持っている、もう1枚の手紙に書かれていた。 俺は彼に向かって、口を開く。 そして、名を告げた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加