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「シキ」
俺の名を呼ぶ声に、後ろを振り向く。
そこには俺より2、3センチばかり低い…とは言え、180は超えている人物がたっていた。
美しい顔立ちは、美しい笑みを浮かべている。
けどその笑顔は、どこか狂気すら感じた。
「なに、クロハ」
「なに、って…お前なら知ってんだろーよ、とっくのとうに。
噂が流れてるらしいぜ、噂がさ」
「ふーん。どんな噂?」
「はあ、お前は相変わらずだな。決まってんだろ?」
クロハはその美しい顔を、俺の顔にグイッと近づけてくる。
「…魔王復活、の噂だ」
…まあ、そりゃそうだよね。
わざと流したし。
俺の狙い通りに行けば、魔王復活の噂が囁かれた段階であっちの世界では勇者を探すんだろーし。
もう少し掘った感じの噂を流せば、新しい勇者も生まれるだろうしねー。
「なぁ、シキ。俺はこの時を10年以上待ったんだよ。
…あいつらに復讐できる日を、なァ?」
「…まーね」
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