第1章

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「個人的な精算は、店と別にしてくれないか」 「…………」 「…………」 顔を見合わせた葛見と夏目が、小さく溜息をついた。 「秋月さん、あの……俺」 葛見が帰った店内。夏目が秋月を振り向く。言いたかった言葉はあったのだけれど、葛見にすっかり気勢を削がれてしまった。 「葛見が悪ノリして、すまないな」 気にしないでくれ、と言われて、はいと夏目が頷く。 「でも……あいつの言うとおりだから」 「え?」 微妙に視線を外して言う秋月を、夏目が見返す。 「握手みたいなものだって……俺もそう、思ってるから。もう、あの話は、終わりにしよう」 握手、と言い切られて、夏目が言葉を無くす。 「時間だぞ。暖簾を出してくれ」 「……あ、はい」 言われて玄関に向った背中を、秋月が見つめた。 そうだ。意味なんか、あるはずがない。あんな状況でのくちづけに。 ―――好きな人が相手ならともかく。 夏目の言葉が胸に痛いのは、何故なのか。 分からないまま、秋月が厨房に向った。 ********************************************************** >第9話 霜月 に続く
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