序ノ巻

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 黄昏。それは夜の世界への誘い。  草木が頭を垂れ、動物たちは住み処へ、山の中はより濃い闇へと沈んでいく。葉から溢れる茜色の光さえ物悲しい。  きっと空の上は赤く美しいのだろう。山の外は賑やかな夕餉の時間なのだろう。遠い街でまだまだ活気があるのだろう。しかし、ここはどこまでも静かで冷たい。  何故なら、山は人ならざるものが住むから。決して人が踏み込んではならない場所。  彼らは息を潜めて待っている。  狩場に獲物が来るのを。  狩の時間が来ることを。  黄昏は狩の時間。そして狩が始まる。
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