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突然目の前に落ちてきた木に、少年たちは悲鳴に似た声を上げ、左右に分かれて走り出した。暗闇で危うい視界に加え、慣れない土地のためか、すっかりパニック状態に陥っているようだった。もう相手のことを気にする余裕すらないように見える。
「山吹! そっちに一匹行ったぞ!」
山吹ははっとし、顔を上げた。イツセは夜目が効くため、日が沈みかけている今でもはっきりと少年が駆けてくるのが見えた。
獲物を見つけた時はどうするべきか。
頭を回転させ、イツセの長老である黒紅(くろべに)に言われたことを必死に思い出す。
──狩を行う時は、三人以上で行動すること。
──術を使える者を中心とし、彼の者の言葉に従うこと。
──獲物は捕らえやすくするため、動きを封じるべし。一に要である足を封じ──。
「うわあ!!」
考えている時間はそうなかった。少年は近くに来て始めて山吹の存在に気付き、向きを変えて走り出そうとしていた。
「ま、まずは、どうすれば……。そうだ、足!」
懐から石の短刀を取り出し、少年のもとへ跳躍する。山吹の作戦では、落下の勢いを生かし、足へと短刀を突き刺す予定だったが、そう思い通りにはいかない。
「いだっ!?」
見事に太い枝に頭をぶつけた。くらりと視界が揺らぎ、コントロールを失った山吹の体はそのまま少年の上に覆い被さった。
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