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「あなた!! 死期が迫っていますよ!!」
街中で突然そんな言葉を掛けられたら、誰だって驚くに決まっている。ドキリとして声のした方を見ると、路上で占いを生業とする老人がこちらを見つめていた。僕は老人に皮肉を言った。
「残念ながら僕は占いや幽霊やUFOといった類いは信じない質でね。お客ならもっと別な人を探した方がいいよ」
しかし老人はあわてて否定する。
「違うのです。確かに私は占いを仕事としていますが、あなたの死期は私の占いで導き出した結果ではなく…」
「おかしな事を言う人だ。占い師なのに自身の占い結果ではないと言う。では一体…」
「ううん、なんと申しましょうか…」
と、老人は僕の頭上を指差し、見上げるとなるほど、建設中の高層ビルから落下した鉄骨が、今にも直撃する寸前だった…。
数台のパトカーと救急車を大勢の野次馬が取り巻いている。その様子を少し離れた所から見ていた老人は、職業病とはいえ、咄嗟に口をついて出てしまった回りくどい伝え方のせいで、救う事の出来なかった青年に対し、自責の念にかられていた。
「私は少しでも人を幸せに出来ると信じ、占い師になったはずなのに…。それがどうだ、私が占い師だったせいで、青年の尊い命が失われてしまった…。私は占い師になるべきではなかったのだ…。今日で廃業だ…、もう…やめよう…」
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