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「笑いごとじゃないでしょ。
そんなので大丈夫なの?」
「大丈夫ってなにが?」
「他の女よ。
ああ見えて樫井くんモテるじゃん」
「女のいない会社なんて、この世にはないよ」
「そうじゃなくて!
一人暮らしのマンションに押しかけられたらどうすんの?この人の彼女は滅多に来ない、なんて簡単に見抜かれるわよ?」
「そういう心配は、もうし飽きた」
「結婚前から倦怠期みたいなこと言わないでよ」
「電話に出ない時。かかってこない時。ラインが既読にならない時…。
もうダメかなぁ、このまま距離に負けちゃうのかなぁ、って思ってさ。それで愚痴愚痴言ったこともあるんだけど。
だけど向こうは流すだけなの。何言ってんの?ハイハイ、って感じでケンカにもならないの。
康平くんにとってこの状況は別に大したことじゃないんだなぁ、って思ったら、私ばっかりヤキモキしてて、なんかバカバカしくなっちゃって。
でも、これでも本気で別れようと思ったこともあったんだよ。その時、色んなこと考えたんだ。
そしたら、私は別に『結婚』がしたいわけじゃなくて、康平くんのことが好きなだけなんだ、って思ったの。そう思ったら疑ったり怒ったりするのはおかしいなぁって。
好きだから信じられるわけだし、好きだから待ってられるわけだし。正直、寂しいな~って思うことも多々あるけど、今のこの、せつない~恋しい~、っていうのも楽しんじゃえ、ってね。(笑)」
「あ~あ。幸せな男だねー。樫井康平のバカは。
ここにいたらブン殴ってやりたい!」
茜はそう言って、今度は梅酒のお湯割りを頼んだ。
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