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「時任くーんっ!!」
旦那様が、泣いている。
その傍らには旦那様付きの執事である霜月(しもづき)さんと、一条家家令である丸谷(まるや)さんがいて、二人ともがオロオロしながら必死に旦那様を慰めている。
何というか……
シュールだ。
「雅が……!! 雅ちゃんが、夏祭りの夜祭に行くなんていう不良な行動をしたんだよぉ~っ!!」
呼び出しに応じて旦那様の書斎の扉を開いて早々繰り広げられる珍劇場に、俺が無表情のまま立ちすくんだことは言うまでもない。
だがそんな一種の硬直状態は、旦那様の発言を耳にして瞬時に解凍された。
「心配だよぉ、雅ちゃんに変なムシが付くんじゃないかと思ったら、心配で心配でリムジンで会場に横付けしたいくらいなのに……」
「旦那様、そんなことをしては会場に御迷惑をお掛けしたします」
「それに一条家の体面にも関わりますので……」
「こうやって霜月と丸谷が言うんだ!
酷いと思わないかい時任くんっ!!」
「いえ、正論だと思いますが」
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